日本ALS協会 茨城県支部総会・交流会 2018年6月10日(日) 会場 小美玉市四季健康館 NEW
※ 当日の様子を抜粋してまとめてあります。ご了承ください。
総会
日本ALS協会茨城支部長 海野佶支部長の挨拶
本日はご多忙な中、ご参加いただきました皆様には心より厚く御礼申し上げます。
ご来賓の先生方にはいつも温かいご支援いただき心から感謝申し上げます。
支部長として本日も出席できず本当に申し訳ありません。
支部運営委員及び関係者の皆様のご尽力により総会開催できること、この場を借りてお礼申し上げます。
医療保健福祉関係者の方をはじめ、多くの方のご尽力により自分らしく生きるための環境整備が進んできました。もちろん、課題があることも認識しています。その課題解決のために、私達が出来ることとして、まず何よりも当事者が「発信」することを願っています。自らの問題を自らが考え、発信する。それが解決への一助になればと願っています。
本日、下村先生と小林先生による「ALS患者のリハビリについて」ご講演があります。ALS患者にとってリハビリは必須のものと思います。ALSは個別性があるので、リハビリにも多様性があると思います。疑問に思うこと、不明なこと、両先生に積極的に質問、相談、発信してください。
ALS協会の存在は、患者家族にとって、貴重な存在です。支部長と事務局長が機能出来ていないことお詫び申し上げると共に、必要とする方にとって、当支部が継続できるよう皆様のご支援とご理解賜りますよう宜しくお願い申し上げます。
体調にはくれぐれも気を付けて頂くとともに、改めて自然災害等への対策も確認ください。
皆様にとって、今日1日が貴重な日となり、「明日への生きる力」になること心から願い、総会の挨拶といたします。
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県立医療大 河野 豊 先生のご挨拶 (ページ構成上抜粋、編集してあります。)
ALSに関しては新しい薬が少しずつ認可されている状況です。ラジカットやその他いろいろな注射の治験薬が各地で行われています。さらに薬だけではなく、ロボットスーツHAL®️のようなロボットのALSへの使用が認められつつあります。新しい治療がここ5、6年の間に出てきております。ただ残念ながら病気を根本的に治す薬や治療は今の所ないというのが現状です。2週間前に札幌での日本神経学会に参加してきましたが、神経難病のメカニズムや原因に近いようなところまで研究が行われているのを目にしました。いつかはきっとこの病気も克服できるのではないかと思っております。そのためにも、出来るだけいい状態で皆様が療養していくということが大事だと思っています。
私の好きな言葉に「病は気から」という言葉があるのですが、こんな科学的ではないことを言って恐縮なのですが、やはり沈んだ心で過ごしていると、あまりいいことはないのではないかと常々思っております。おそらく皆様にとっては大変な病気ですので、沈みがちな時期が多いかと思いますが、今日のような交流会などに是非出ていただいて、いろいろ発信していただいたり、他の方の意見を聞いて元気をもらって、また来年に向けて英気を養っていただけたらと思います。
今日はALS患者のリハビリについてということで、下村先生と小林先生にレクチャーいただくことになっていますが、私、この2人ともよく存じていますけども、なんと言っても元気がいい、ですから元気だけでもしっかりもらって、今日の1日を過ごしていただければと思います。
私、茨城県の難病相談支援センターの管理責任者をしております。患者さんお一人お一人のご事情に応じて相談を受けております。なにかお困りのことなどありましたら、是非遠慮なく相談支援センターにお電話いただければと思います。100%解決できる問題ばかりではありませんけども、お電話いただくことが1つの訴えになりまして、いろんないいことが起きることがありますので、是非利用していただければと思います。以上で私の言葉と代えさせていただきます
レクチャータイム
筋萎縮性側索硬化症(ALS)に対する呼吸リハビリの 有効性・重要性 ~今日から始められる呼吸リハビリ~
筑波学園病院 理学療法士 下村哲志※当日使用した資料をまとめてありますので、ご参照ください。こちら (pdf)
筋萎縮性側索硬化症(以下ALS)は病気の進行により四肢の筋力低下とともに呼吸筋の麻痺も生じてきます。呼吸筋の麻痺が進行するとどんなことが起こるでしょう?元々、我々の自然呼吸では吸う時には横隔膜を主として筋力を要しますが、吐く時は肺自体の弾性でしぼんでいくため力を必要としません。すなわち呼吸筋の麻痺では吸う力が弱くなるということです。吸う力が弱くなると当然取り込まれる空気(酸素)が少なくなるため、運動した際の息切れや疲れやすさ肺の広がりが少なくなり、胸郭の硬さにもつながってしまいます。ただ手足の筋力の低下よりも呼吸筋が弱くなってきたことを意識することは少ないのではないでしょうか?それは手足の症状の進行に伴って疲れる・息切れが出現するほどの激しい運動をしなくなってくるためであり、気づかないうちに衰えていってしまっているのです。
さらには吸う量が少なくなるということは当然吐く量も少なくなるので、痰の出しにくさや声の出しにくさに繋がってしまい、日常生活にも様々な影響が生じてきます。良い呼吸状態を保つことはより良い生活を長く維持していくために非常に重要なことです。
呼吸リハビリは早期から取り組んでいく必要があり、姿勢・柔軟性・筋力の維持・改善が重要となります。
<姿勢>
息苦しそうにしている方ってどんな姿勢を思い浮かべるでしょう?うつむき気味で前かがみになって肩で息をしている姿が想像できると思います。この姿勢では深呼吸をすることも出来ずに、非常に効率の悪い呼吸しかできなくなってしまいます。そしてだんだん胸郭の広がりが悪くなり、肺自体の広がりの低下+肺の周りの鎧(肺を取り巻いている骨・関節・靭帯・筋肉等)までも硬くなってしまいます。良い姿勢を取るということは呼吸のしやすさを作る出すことであり、肺自体・胸郭の柔軟性を保つためにも重要です。胸を張って肩・肩甲骨を大きく動かすことから始めてみましょう。
<柔軟性>
前記したように姿勢の悪さは肺自体の広がりと胸郭の動きの低下を招いてしまいます。しかしいくら良い姿勢を保っていたとしても日常的に使っている動きが小さければだんだんと柔軟性は低下してしまいます。そのため胸郭のストレッチ、特に体をしっかり開くような動きをしていくことは重要です。また肺自体の広がりも徐々に低下しない様に肺にしっかり空気を入れて強制的に広げてあげる運動(最大強制吸気トレーニング)が大切になります。それを行うにはLIC が有効です。<筋力>
冒頭に述べたように呼吸筋の麻痺では吸う力が弱くなるのが特徴です。吸う力を維持するために最も日常的に出来ることと言えばしっかり吸って吐く、すなわち深呼吸をしっかり繰り返すことです。また一生懸命吸おうとしても肺に空き状況が無ければ十分に吸うことはできません。その為にしっかり吐くことは大事になります。さらには力強く息を吐き出すことは痰を出すことにもつながってきます。身体の内部に溜まった痰を出すには力強く吐きだす力しかないのです。息をためて力強く吐きだすためには腹筋・背筋の強い働きと声帯の動きが重要になります。ハッフィングといって声を出さずに息を勢いよく「ハッ!ハッ!ハッ!ハッ!」と吐き出す運動が有効です。また声を出来るだけ大きく、長く出そうとすると必然的に腹筋・背筋にも力が入りやすくなり、声も出しやすさにもつながります。話し難さが出てくると話をする機会が減少し、声の出し難さにもつながってしまいます。ただ単に「声を出す練習をしましょう!」と言ってもなかなか続くものではないので、好きな歌を思いっきり歌うというのは呼吸筋を維持するうえで非常に有効な方法だと考えています。
息苦しさはもちろんですが、痰がからんでスッキリしない、声が出しにくいというのは身体的なストレスとともに精神的にも辛いものです。それらは全て呼吸機能に関わる症状です。逆に言えば呼吸機能を良い状態に保っていくことが症状の改善に繋がります。
胸を張って良い姿勢を意識して、大きく深呼吸をして、しっか り声を出して、みんなが「わっはっはっ」笑いあう!! そんな日常的に出来ることからぜひ試してみて下さい。
痰を出すための方法
つくば国際大学 理学療法士 小林聖美※当日使用した資料をまとめてありますので、ご参照ください。こちら (pdf)
1.仰向けでいることの弊害
自然な呼吸は横隔膜の運動で行われています。横隔膜は特に背中側が大きく動く構造になっています。仰向けになると、内臓が背中側に集まります。呼吸障害のない状態では、背中側に内蔵が集まっても、横隔膜は良く動きます。しかし、横隔膜の動きが悪くなってくると(呼吸障害が進んでくると)、内臓による圧迫を押し返すことが出来ず、仰向けでは息苦しさを感じやすくなります。このような状態の時には、座って いる方が呼吸を楽に深くできます。また、呼吸障害が重度になると息苦しさだけでなく、背中側に痰が溜まる原因にもなりやすくなります。2.呼吸リハビリテーションガイドライン
ALSの患者さんにどのような方法が有効であるかということがまとめられています。痰を出すために有効であると言われていることに、手で咳を介助してあげること、機械を使用して咳を介助してあげることなどが挙げられています。3.病気の進行に応じた痰の出し方
呼吸障害がない場合でも、咳を強く出す練習をすることが勧められています。また、呼吸障害の兆候が現れ始めた時期から、気管切開をした状態で人工呼吸器を部分的に使用する時期には、咳の練習に加えて、咳を介助してもらうことや姿勢を変換すること、胸を他の人に動かしてもらい、よく動くようにしておくこと、カフアシストのような機械を使用することなどが推奨されています。常時気管切開下で人工呼吸器を使用している時期には、姿勢変換や胸を動かしてもらうこと、機械を使用することなどが勧められています。また、呼吸障害の兆候が現れ始めた時期から、特に呼吸器を使用する時期には、加湿をして、痰自体を柔らかくすることも有効と言われています。4.痰を出す方法
1) ハフィング
ハフィングとは、声帯を閉めずに(声を出さずに)息を吐き出す方法です。痰がもうすぐ出そうなところまで上がってきている 状態であれば、大きく息を吸い込んだ状態から、速く強く「ハッ、ハッ、ハッ」と数回息を吐きます。まだ出そうなところまでは痰が上がってきていなくて、でも痰がありそうな時には、いつもより少し多く息をすったところから「ハー ーーー」と息を吐きます。その時に体を前に曲げながら行うことも有効です。2)アクティブサイクル呼吸法
上記のハフィングと、普通の呼吸、深呼吸して息をこらえることを組み合わせて、痰を出すことを促す方法です。普通の呼吸、深く息を吸って止める、普通の呼吸、深く息を吸って止める、普通の呼吸を繰り返し行った後にハフィングをする方法です。3)咳
痰を出すには、強い咳をすることが有効ですが、病気が進行してくると、速く息を吐くことが難しくなります。どれだけ速く息を吐くことが出来るかを測定する方法として、ピークフローメーターというものがあります。この測定で、息を吐く速さが160~270L/分を下回る場合、通常に咳をしても痰が出づらい状態となります。そのような場合、咳に合わせて胸を押すことや、お腹を圧迫しながら咳をするなどの工夫が必要となります。また、 強く速い咳をするためには、たくさん吸うことが必要になります。たくさん吸うことが難しい時には、アンビューバックや LIC TRAINER といった器具を使って、たくさんの空気を肺に送り込んだ状態から咳をするなどの工夫も有効です。4)体位ドレナージ
痰のある部位や、空気の入りの悪い部位を上側にする方法です。呼吸障害が重度になってきた場合、仰向けでいる時間が長くなりやすいことが問題となります。仰向けでいると、背中側の空気の 入りが悪くなりやすく、痰も溜まりやすくなります。これを解決するためには、車いすなどに座る、寝ている場合でも仰向け以外の姿勢をとることは重要になります。特に横向きからやや前に体を倒したように姿勢(前方へ45°傾けた側臥位)などを行うことが必要です。5)スクイージング
息を吐くことに合わせて胸郭を圧迫する方法です。骨が脆い場合や、ご高齢で骨粗鬆症などがある場合には特に注意が必要です。6)排痰補助装置
息を吸うのに合わせて空気を送り込み、咳をするのに合わせて、空気を吸いだす仕組みの機械です。自分の咳ではなかなか痰を出すことが難しい場合、空気をたくさん送り込むこと、咳をする際に空気をたくさん、速く吐き出すこと両方を助けてくれる機械です。5.まとめ
上記の内容は、一般的に言われていることになりますので、お一人ずつ合う方法、合わない方法があると思います。まずは主治医の先生にご相談いただき、現状に合った方法をみつけていただくことが重要ではないかと思います。また、理学療法士などリハ職にもご相談をいただければと思います。交流会
交流会での質問、その答をまとめました。
日本ALS 協会 嶋守 恵之会長のご挨拶
東京から来た嶋守です。発病して10 年、呼吸器をつけて7 年 です。ゴールデンウィークはひたち海浜公園に花を見に行きました。
車椅子の人が多いのにびっくりしています。東京支部総会より多いかもしれません。皆さんから、どうやって来たのか知りたいです。
A 車椅子の移動に関して
・那珂市では社会福祉協議会で車を数台持っています。大型の車 (ハイエース)は車椅子以外にも、ストレッチャーがそのまま載せられるようなタイプのものです。予約して無料でお借りして、ガソリン代だけお支払いする感じです。
・県外へ遠出したり、県内の観光地を廻ったりしています。電車移動するのも大好きなので、計画を立てています。
その他、社協の車、ヘルパーさんの車、ご自宅の車でいらした方がいらっしゃいました。Q 移動の際の体幹の保持に関して
訪問看護スタッフの方より
体幹の保持がかなり出来ない状態になっています。車椅子からポータブルトイレへの移動はスカイリフトという立位保持のリフトを使っていますが、体感が崩れてしまう状況が起きやすくなっています。重心を保った状態であれば保持できますが、重心が崩れると前にぱたっと倒れてしまう状況です。他にポータブルトイ レに移動する方法や、ベッド上でこういった方法をした方が安全なのではないかなど、ご意見ありましたらいただければなと思います。A
・ベッドの横にポータブルトイレを置いて、つるべーというリフトで、ネットを使い機械に吊るして横回転で移動させてます。車椅子への移動もつるべーでやっています。腰を痛めることということはないです。それ以前は自力でやっていましたが転倒すると危ないので、今はつるべーを有効に使っています。
・首に関してはヘッドマスターカラーというもので、首が前に倒れてくるのをからで押さえた方が、しっかりするのではないかと思い使用していました。体幹もということですが、まずは首のケアをされて異常があるかというのを見てもいいかと思いました。
Q 寝ている時の脚の痛みについて
ベッドのマットレスを、軟らかいものだと体が沈み込んで動けないので、硬いものを使用しているのですが、仰向けで寝ると尾てい骨が痛み、膝を伸ばして寝ると1 時間後には脚の先が布団の重みに耐えられなくて痛いです。痺れて痛くてどうしようもなくなります。1 時間ごとに足を伸ばしたり、曲げたりしてもらっています。他の皆さんはどのようにされてますか?
A
・我が家ではベッドを電動で頭や脚を上下調整できるものや、マットレスも空気で加圧、徐圧したりして体に当たらないようにしています。装具をつけると布団の重さは大丈夫です。
・痛みを抑える薬を使用したり、ナイトブレースという脚につける装身具でつま先を伸ばすものがあり、夜だけ使う形です。主治医の先生とご相談されてみてください。
Q 作業療法士さんより
患者さんやご家族にすごい寄り添いたいという気持ちがある反面、どこまで聞いて大丈夫なのかなということ。またご家族に本音を聞きたいなとか、本音の聞き出し方の難しさとか、本当はどんなことに迷っているのかなど、聞いて手助けや介入できるところがあればと思うけれども、聞きにくいというのもセラピストの悩みの1つであります。少しだけ本音を担当セラピストにも教えていただけると、微力ながら手助けができると思います。
A
・家族にも、本人にもどんどん踏み込んでいただけるとありがたく思います。
Q コミュニケーションがうまく取れません
A
・筆談ができていた頃はコミュニケーションもお互いに取れていましたが、筆談ができなくなってからは伝の心や透明文字盤を勧められました。本人に「これじゃないとコミュニケーション取れないのだから努力しましょう」と押しつけてしまいました。当時は本人の気持ちに寄り添うことができなかったことが、コミュニケーションを取れなかった一つの原因かなと思います。今は、本人の表情で状態を私たちが感じ取っている感じです。
・本人がALS とともに生きたいという気持ちがあれば、押していけると思います。夫婦であれば、喧嘩してもなにしても自然体でやっていけると思います。
当日行われたレクチャーへのご意見、ご感想
・(奥様が療養されていたとき)病院の先生から「体はこまめに動かしなさい」「寝る前に必ず胸のスクイージングをやりなさい」と言われ、寝る前にスクイージングをして、痰を取ってから休ませるということをやってきました。その甲斐もあって、16年間呼吸器をつけながら好きな所へ行って、好きなことをやっていけました。療養するときに毎日手を抜かないで、患者には過ごしやすい状態でいてもらう、ということを心掛けていてください。
・少し声が出にくくなってきているので、今日のレクチャーを参考にして胸の運動をやっていけたらと思っています。
参加していただいた業者様の紹介
株式会社 みどりのまきば企画
伝の心などのコミュニケーション機器やセンサースイッチなどを 取り扱っています。
詳細は、みどりのまきば企画のウェブサイトをご覧ください。
http://midorinomakiba.org
カータテクノロジーズ株式会社
呼吸リハビリ機器「LIC トレーナー」を取り扱っています。
詳細は、カータテクノロジーズ株式会社のウェブサイトをご覧ください。
http://carter-tech.jp/
トクソー技研株式会社
痰吸引器、カフ圧調整器など医療機器を含め、福祉、介護用品を取り扱っています。
詳細は、トクソー技研株式会社のウェブサイトをご覧ください。
http://www.tokso.net/ボランティアとしてお手伝いしてくださった、つくば国際大学の学生さんたちです。
お疲れ様でした。お手伝いどうもありがとうございました!