症状と介護 NEW
ALSの患者さんの症状に合わせ、介護するのに役に立つポイントなどを紹介します。
口腔ケアのポイント
総会の懇親会で介護者から「どのようにしたらいいのか?」との質問がでました。参考になさってください。
口の中の機能
唾液は食べ物を塊にして飲み込む働きと、食後、食べカスを防ぎ虫歯菌を増殖しないように酸性を中和させ、虫歯にならないようにする自浄作用があります。
ALSの方には下記のような口の方がいます。
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舌・頬の機能
下や頬は粘膜ですが、粘膜は使わなければ弱っていきます。
舌・頬に続くのど、食道、胃、腸、肛門に至るまで粘膜ですから、口から食べることをしないと粘膜の細胞が壊れて腐ってしまいます。
舌は食べ物を唾液に混ぜて、食べ物を小さな塊にして飲み込みます。食道を安全に通る大きさは親指の先ぐらいです。舌の機能が衰えると塊がつくれないので途中でつっかえてしまいます。しかし、舌の機能が保たれていれば、歯がなくてもあごが歯の役割をある程度果たします。
歯と歯ぐき
食べカスが原因で起こる病気です。歯と歯ぐきの境目に、楊枝などを入れると少し入ります。
それをポケットと呼びますが、ポケットが3ミリ以上になると歯周病のおそれがあります。
歯周病の人はポケットが深く、膿が溜り、歯がゆらつき食べ物が噛めなくなります。
もちろん口臭も出てきます。
深いポケットの部分は、歯ブラシでこすると根が露出していためてしまいます。
歯ぐきが抜けて露出してきた部分はとても弱く虫歯になりやすく、
感染を起こしやすくしますので強くこするのはやめましょう。
ブラッシングのポイント
口の中をきれいにするだけではなく舌の機能が悪い人には、歯ブラシを用いて刺激してみましょう。
ほとんど話さない人の場合……
舌根(舌の根本の部分)がのどの奥に落ちてしまっているので、
下を向いて顎の下にたるみができたところを親指でギューッと押して刺激すると、
舌根部が立ち上がってきます。
口が閉じない人……
前歯上下の歯ぐきをマッサージすると口が閉じられ口の中が乾かない。
食事中にむせる人……
①食事前に嚥下体操をすると咽喉を刺激し、むせたり、気道のほうに誤飲するのを防ぎます。
②嚥下に必要な筋肉を鍛える。口の周り、側頭筋を使うようにする。
舌を刺激する……
①舌の1/2手前で下の横の部分をなぞる。
②下の裏側をくすぐる。(唾液腺もあるので刺激するとよい)
舌の裏の筋の部分をなぞる
よくある病気『誤嚥性肺炎』
誤嚥といえば、むせるものと考えがちですが、むせない誤嚥があります。
高齢者やALSの患者さんは咽喉のあたりが鈍感になっているので、むせないで、反射も鈍くなって気道をしっかりふせぎきれず誤嚥になることもあります。
「嚥下体操」「舌体操」
唇や舌の機能、嚥下の機能を保つために「嚥下体操」「舌体操」をやってみましょう。
「嚥下体操」
①舌を前後に動かす。②舌を上下に動かす。③舌を左右に動かす。
発音体操
パ→食べ物を取り込む。タ→潰す。カ→咽頭でゴックン。ラ→飲みこみ後、口をきれいにする。
「舌体操」
資料:東京都中野区南部保健相談所
参考文献:白田千代子、介護予防研修会講義から訪問口腔ケアのポイント。
地域保健1999.12
ALSに対する呼吸リハビリの重要性
ALSに対する呼吸リハビリの重要性 理学療法士 下村 哲志
ALSの進行に伴って呼吸筋の麻痺は徐々に進行していきますが、呼吸筋が弱っていくことは普段なかなか気づきません。手足の症状の進行に伴い激しい運動をしなくなるので、呼吸筋の衰えに気づかなくなるからです。
進行していく中でもいい呼吸をできるように、元気な頃から呼吸筋を保っていくことが大切です。
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進行予防のために早期から行うべき呼吸ケア
では、どのように呼吸筋を鍛えるのか?
呼吸をするには吸う力が大事です。吸う力が減少すると肺が広がりにくくなり、硬い鎧のように胸郭が硬くなり、ますます肺は広がりにくくなります。深呼吸することもよいですが、しっかり吐くことが大事です。しっかり吐くことは吸いやすさに繋がります。
呼吸トレーニング(1)しっかり吸ってしっかり吐く
・ロングブレス……吸気1:呼気3
・声をしっかり出す……(発声=呼気)人間は息を吐くとき声が出ます。簡単にできるのは歌を歌うことです。
呼吸トレーニング(2)
姿勢が崩れるといい呼吸ができません。胸を開くような運動、胸郭のストレッチを家族などが協力して行います。